最後の砦
友人から、「あなたは最後の砦だ」と言われた。
その友人に会うのは半年以上ぶりだった。その間に私は様々な感情を経験した。全てを彼女に話した。
彼女は話さなかった。私の言葉を聞いていた。でも私には見えていた。彼女が自分の中にあるなにかと私の言葉を重ねていることが。
それでも彼女は聞いていた。
優しく、強く。
全てを彼女に話した。
彼女の中にある何かに触れられるように。少しでも彼女の気持ちが晴れるように。
彼女にも、全てを話して欲しかった。そういう子ではないと分かっていたけれど。
私の中での平等を求めた。
「私ばっかり話しちゃったね、ごめんね、次はわたしが聞くね。いつも私が救われてばかりだ。」
わたしはこう言った。
彼女は優しく微笑んだ。
「いいの、話して。話してほしい。あなたが話すことで、私は救われている。わたしは、辛いことを、話さずにいる方が楽なんだ。でも、話してくれる人がいたら、なんだか共感できて楽になる。だから、話してほしい。あなたには。」
私たちは、違う人間だった。
だからこそ私たちは、知らぬ間にお互いを救いあった。
ふたりだけで会ったのは数年ぶりだった。
「最後の砦」
あなたと2人で会いたいときは、いつもそういう時だ。
「夜中にふとあなたのことを思い出したんだ。泣きたいほど嬉しそうに、シュークリーム食べてた。」
わたしは彼女にそう伝えた。